雫に溺れて甘く香る
春が終わり、夏に変わりかけの初夏。

昼間は暖かい気候だけれど、夜になると優しく涼しい風が吹く。

その風に髪をそよがせながら、ふらりと夜道を歩いて……。


大きく息を吐いた。


『女はタバコの煙を嫌がるもん』


……ですか。もう確実に“女”がいる発言だよね。

ふーん。あの続木さんに彼女がいるんだ。

いたとは思ってなかったなぁ。


まぁ、絶対に性格は悪そうだけど、顔はいいもんね~。

別にね、だからどうってことはないんだけどさ。

いや、ほら別に、続木さんって顔は良いけど無愛想だし。私の好みと違うわけだし。

うん。私の好みって、笑顔で楽しい人だし。続木さんなんて、まーったく好みじゃ……。


ないはずなんだけど。ショック受けてるってどうなの?

他のお客様には微かにでも笑顔で、だけど私には無愛想な続木さん……。

ふーん……って、嫌な気分になったのは確かだよね?

ふーんってなって、それから思ったことは“私はこの煙が嫌いじゃない”と思ったこと。


確かにタバコなんて身体に悪いんだし、あまり勧められた事じゃ無いんだけど……それだって彼の一部分だ。

煙草を吸うのが習慣的な人は、それが当たり前みたいに煙草を吸うけれど、一番吸いたい時は……。

一仕事終えた時と、苛ついた時って聞いたことがある。ヘビースモーカーの先輩に……。
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