雫に溺れて甘く香る
「禁煙したんじゃなかったの?」
「やめた」
「あ……そう」
呟きながら乱れた髪を手櫛で整える。
この煙草の匂いも好き。
だけど“好き”だなんて言葉は、絶対に使う事はない 。
「彼女。煙草の煙が嫌いだったんじゃなかった ?」
「お前には関係ないだろ」
“関係ない”……か。
その言葉に苦笑して目をふせる。
うん。そう言う意味で、私達には“関係”なんかないね。
身体だけの関係。
それがお似合いの私達──……
どちらかがやめようと思えば、簡単に終わるだろう。
いや。終わらせよう。
微笑みを浮かべて続木さんを見つめると、微かに不思議そうな顔をされた。
「さよなら」
バックを持つと、振り返らずに部屋を出る。
長いようで短い廊下を小走りに通りすぎ、誰にも出くわす事もなく通りに出た。
シンプルな部屋の内装に似合わない、点滅している安っぽい電飾。それを眺めてからホテルを後にする。
外は夜が明ける頃で、少しだけ明るい。空を見上げると、暗い雲が空を覆っていて……雨が降るのかもしれない。
生温い風が吹き、下ろしたままの髪を揺らした。
そう言えば、初めて出会ったのも雨が降っていたことを思い出す。
それを思い出しながら、ゆっくりと誰もいない道を歩き始めた。
なんか別れるって……。
「……簡単だな」
ポツリと呟く。
呟くと同時に音もなく水滴が落ちてきた。あっと言う間にアスファルトを黒く染めていく。
生ぬるい空気に混じって冷たい雨。
それから頬を温かい雫が落ちた。
好きで安い女になったワケじゃない。
好きで抱かれるだけの関係になったワケじゃ ない。
それでもいいと思ったのは……そう思うのは、続木さんだったからだ。
好きだなんて、気がつかなければ良かったのに。
「やめた」
「あ……そう」
呟きながら乱れた髪を手櫛で整える。
この煙草の匂いも好き。
だけど“好き”だなんて言葉は、絶対に使う事はない 。
「彼女。煙草の煙が嫌いだったんじゃなかった ?」
「お前には関係ないだろ」
“関係ない”……か。
その言葉に苦笑して目をふせる。
うん。そう言う意味で、私達には“関係”なんかないね。
身体だけの関係。
それがお似合いの私達──……
どちらかがやめようと思えば、簡単に終わるだろう。
いや。終わらせよう。
微笑みを浮かべて続木さんを見つめると、微かに不思議そうな顔をされた。
「さよなら」
バックを持つと、振り返らずに部屋を出る。
長いようで短い廊下を小走りに通りすぎ、誰にも出くわす事もなく通りに出た。
シンプルな部屋の内装に似合わない、点滅している安っぽい電飾。それを眺めてからホテルを後にする。
外は夜が明ける頃で、少しだけ明るい。空を見上げると、暗い雲が空を覆っていて……雨が降るのかもしれない。
生温い風が吹き、下ろしたままの髪を揺らした。
そう言えば、初めて出会ったのも雨が降っていたことを思い出す。
それを思い出しながら、ゆっくりと誰もいない道を歩き始めた。
なんか別れるって……。
「……簡単だな」
ポツリと呟く。
呟くと同時に音もなく水滴が落ちてきた。あっと言う間にアスファルトを黒く染めていく。
生ぬるい空気に混じって冷たい雨。
それから頬を温かい雫が落ちた。
好きで安い女になったワケじゃない。
好きで抱かれるだけの関係になったワケじゃ ない。
それでもいいと思ったのは……そう思うのは、続木さんだったからだ。
好きだなんて、気がつかなければ良かったのに。