雫に溺れて甘く香る
それは……そうなんだろうけれども。

いや、でもこれはダメでしょ。

短い攻防の末に衣服を全て剥ぎ取られて、顔を赤らめながら手で身体を隠す私を見下ろし、続木さんは小さく苦笑した。

「シャワー浴びてこい」

ぐいぐいとバスルームに押し込められて、瞬きをする。


……えっと。だから何なんだ、いったい。

呆然としていると、続木さんが耳元にキスをしてきた。


「風呂でするか?」

「……お風呂で……」


瞬時に身の危険を察知する。

しない、しない、しないから!


「正気に戻ったか」

続木さんは呟きながら、お風呂の蛇口を指し示した。

「続木さ……?」

「話は後だ。まずは浴びろ」

そう言ってドアを閉められる。


……何なんだろう。急にどうしたんだろう。

話って何よ……なんで今更……。


顔を合わせるのが怖い。終わりにしようとしてたのに……先の見えない関係をやめようと思ったのに。

どうして……?


「何やってるんだ」

ガチャと再度ドアが開いた、と思うと同時にそう言って、続木さんはズカズカと入って来た。

シャワーを出すと、頭からぶっかけてきて、慌てて顔を背ける。

「ふぁ……っ! 鼻に……っ」

「大変だな」

「人事みたいに……っ!」

顔を上げると、間近に続木さんの顔があって目を見開く。


シャワーが流れる音と、お互いの息遣い……。


微かに微笑みが見えて、優しく鼻の頭に軽くキスをされると背中を押された。
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