雫に溺れて甘く香る
「目は正直なのに。どうして行動は真逆になるんだ?」


──……は?


また溜め息が聞こえて、目の前のコーヒーテーブルに、私を跨ぐような形で続木さんがドカリと座る。

「俺の行動、無にしないでくんない?」

「……え?」

「え……じゃなくて」

「行動……?」

ええと今さっきのワケわからない行動?

「また来るかって考えるのも、けっこうな賭けだったんだけど」

瞬きをしながら顔を上げ……そこに苦笑している続木さんを見つけてポカンとした。

「え?」

「お前は馬鹿か、それとも単なる鈍感か」

や。それはどっちもひどい。

「半年も音沙汰ないし。篠原には連絡先を教えときながら、俺には教えないし」

「え……と。うん。聞かれてないし」

「聞かれてなくても、教えるもんだろうが」

無茶苦茶な。

「な……んで?」

「なんでも」

何でも……って、

「全然、意味解らない! 知りたかったなら続木さんの方から聞けばいいじゃないか!」

「聞けるか馬鹿。あんな始まりだったのに……」

……そうだね。始まりが始まりだったからね。

「……何が言いたいの」

「何が言いたいんだろうな」

続木さんは溜め息をつきつつ片手で髪をかき上げると、そのままくしゃりと拳を握りしめた。
< 83 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop