雫に溺れて甘く香る
それから、ゆっくりと……珍しく困った様な表情で私を見つめてくる。

「もう……やめないか?」

「は……?」

「だから、もうやめよう」

ああ……そういうコト。

続木さんは、曖昧に“終わり”を迎えるんじゃなく、ハッキリとした“終わり”が欲しかったんだね。

確かに、私のやり方は少しズルイ。

そんなの解っているけど……。


「お前。解ってないだろ」


溜め息混じりの声にまた俯く。


「俺も、最初はお前のコト利用した訳だから、あまり大きな事も言えないが……」

利用したのなんて……お互い様じゃないか。

私は付け込んだし、続木さんは利用……。


利用って、何を?


「お前。何で俺に抱かれた後は、いつも目を合わせようとしないんだ?」


だって……そんな事をしたら寂しく思ってしまうもの。


寂しくて、寂しくて……帰れなくなっちゃうもの。


続木さんの手が伸びてきて、軽く髪に触れ、触れた所から髪をかき上げられて上を向く。


「どうして俺を欲しいと訴えてるのに、お前は俺を見ない?」


何を言ってるの?

私、そんな風に訴えたコトなんてない。そんなおこがましいコト、言った事すらない。


「馬鹿か」

……と、言われても仕方がない気がする。

「馬鹿だよね」

「本当にな」

続木さんの顔が、ふわりと優しい顔になって。


それから、スッと耳元に唇を近づけてきて──…


「お前に付け込むぞ……?」

「は……?」
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