雫に溺れて甘く香る
「んな……っ!?」

慌てて身体ごと離れると、自然とエレベーターに乗り込むことになる。

「とにかく、連絡寄越せ」

閉まりかかるエレベータードアの隙間から見えた続木さんはいつもと同じ表情で、軽く片手をあげていた。

「わ、わかった」

何とか閉まりきってしまう前に答えて、階下のボタンを押す。

動き出したエレベーターの下りていく感覚に身を委ねながら、じわじわと顔が熱くなってきた。

なんだろう。もうすでにおたがいの裸すら見ているような関係なのに、この照れくさいような恥ずかしさ。

今、頭にキスされたよね。間違いないよね?

恋人繋ぎとか、頭のてっぺんにキスするとか、今更ではあるんだけど、逆に新鮮で恥ずかしい。

心の中でキャーキャー言いながら、両頬を押さえて見悶えた。



……や。正気を保たなくちゃ。

それにしても、続木さんが実は束縛系だということは新たな発見だ。

わかりにくいけど、心配してくれたんだということもわかった。

エレベーターが一階に着くと、表情を取り繕って歩きだす。

家につくと、名刺にあったメアドをスマホに登録してアドレスと番号を入力して【家につきました】という言葉を添えて送信した。

すると速攻で連絡がきてギョッとする。

『連絡寄越せって言っただろうが』

「え。メール送ったじゃん」

『メールは誰にでも送れるだろうが、安心できるか。だから声くらい聞かせろ』

「…………」

……実は心配してくれた、と言うよりも、心配性なことも……新たな発見だった。









< 99 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop