海に溶けて、そうして
はじめまして、さようなら

今日から初めての学校。

こうこうせい、というものにずっと憧れていた私は、とてもウキウキしていた。

海からずっと眺めていた、楽しそうに笑いあう女の子たち。

あの輪に入れたらいいなって思ってた。
友達とか、出来たらいいなって思ってた。

ずっと楽しみだったのだけれど……やっぱり、ダメだったみたい。


「内海さん?!」

先生の驚いた声が聞こえる。

1番大事な入学式。
頑張ってぴしっと背筋を伸ばしていたけれど、式が終わって体育館を出たところで、中庭が目に入った。

真ん中に、大きな池があったんだ。

水を代えたばかりのようで、水面が光を反射してキラキラと輝いていて。

とっても気持ち良さそうで、思わず駆けだしていた。

「わぁ、水だーーっ!」

ぽぉんと跳んで飛び込むと、後ろの方でいくつか悲鳴が聞こえた。

──ああ、やっちゃった……。

後悔してももう遅い。普通の女の子として頑張ろうと思ってたのに、入学早々やらかしてしまった。
気持ちは落ち込んでるのに肌に触れる水は気持ちよくて、複雑で泣きたくなる。

私の行動は、きっと変な人に見えるんだろう。


どうして、普通の女の子になりたかったのか。
どうして、水に飛び込んだりなんかしたのか。


でもそれは、この一言できっと片付く。




私、内海 日向(ウツミ ヒナタ)は人魚である、と。


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