プリンセス騎士 ※更新中※






開始30分ほどたった時、陽一くんが突然立ち上がった。





「どうしたの?」

「あ、いや…」





手には携帯を握りしめ、画面を見つめたまま動かない。

誰かからLINEが届いたみたい。

内容はわからないけど明らかに取り乱してる。

これは普通じゃない、と悟ったあたしは陽一くんに声を掛けた。





「行きなよ。なにかあったんでしょ?」

「…うん。でも」

「あたしは大丈夫。一人で帰れるから。」

「悪い、未戸香。」





振り返らず一目散に人混みの中へ消えた。



一体誰だったんだろう。



未戸香は虚しく空を見上る。



花火大会ってこんなに寂しかったっけ。

あたしの気持ちなんてお構いなしに花火は打ち上がるし。

…花火のバカ。







その数日後だった。

麗華さんと陽一くんがよりを戻した、と聞いたのは。



あたしの夏も恋も儚く散った。






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