あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
会社は仕事をするところ。
仕事をするところ。
噂なんて気にするな。
みんなに迷惑掛けたわけじゃないから、堂々としていればいい。
自分にそう言い聞かせて、午後からの仕事に精を出した。
「ごめん。中田さん。コーヒー淹れてくれない?」
私が仕事に区切りをつけた頃を見計らって、今日は内勤らしい営業部部長の矢田部長から声が掛かった。
部下想いで心配性の部長にはさっき、書類を提出のときに、婚約破棄の話を話している。
部長の気遣いで理由は聞いてこなかったから、私も話していない。
「ついでに中田さんの分も淹れといで。ちょっと息抜きしな」
部長の笑顔にホッと肩の力が抜けた。
思いのほか、好奇の目や同情の目は、肩の力を加えていたらしい。
「ではお言葉に甘えて……」
私は立ち上がり、フロアの片隅にある給湯室に向かったのだけれど。