あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
08挨拶


まさか……と心の中で呟いて、私は鞄の肩紐を握りしめた。

目の前に立つのは少し古びた一軒家。
私の実家だ。

最後に帰ったとき、隣には勇輝がいた。
まさか、今度は他の男性とこの場所に立つとは思わなかった。

「綾音?身体が辛いか?」

隣に立つ男性、スーツをビシッと着こなした主任が私の顔を覗き込む。
私は慌てて首を横に振った。

「いえ。平気です」

幸い今日は体調がマシだ。
ただ妊娠が分かってからというもの、食欲は完全に消え失せ、体重が激減した。

会社では妊娠のことは黙っているけれど、最近中田さん、痩せたというよりやつれていない?って心配されるようになった。

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