あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


嬉しいと思っていた。
それが嘘なのか本当なのかは私には判断がつかない。

だって、妊娠を告げたときも、産みたいと言ったときも、主任はそんな素振りを見せなかった。

主任は床に手をつき、再び、深く深く、畳に額をこするくらいに、頭を下げた。

「お願いします。綾音さんを僕にください。娘さんとの結婚を許してください」

お願いします、お願いしますと何度も繰り返す主任に、私の目頭が熱くなる。

主任が私を好きなのかはわからない。
本当に責任を取るためだけの行動なのかもしれない。

それでも、私の意志を尊重しようとしてくれていることが、嬉しかった。

私も隣で同じように両親に頭を下げた。

「お父さん、お母さん。お願いします」

この子を産みたい。
守りたい。

そして願わくば、主任とともに生きていきたい。

大好きな、主任とともに。

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