あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
やがて、声を絞り出したのは、父だった。
「……わかった。結婚を認めよう」
父の言葉に私と主任がほぼ同時に顔を上げる。
父はどこか気恥ずかしげに、最近白が目立ってきた髭をいじっていた。
母はその隣で嬉しそうに微笑んでいる。
「綾音。元気な子を産みなさい。今はそのことを一番に考えるのよ」
「はい」
母親業の大先輩である母の言葉に、私は真摯に頷いた。
命は守り抜くって決めていたのだ。
そして、今日、私はもうひとつ心に決めた。
嘘でも"好き"だと言ってくれた主任の、一番の支えになる、と。