あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
それから二週間。
私はがむしゃらだった。
矢田部長と春日くんと主任に、散々心配されたが、今の仕事に全力投球で臨んだ。
もちろん、身体も大切にした。
守りたいと言ってくれた主任のためにも。
そして、明日は待ちに待った発売日。
明日の開店9時とともに商品を売り始めるため、最低、今日中にはスーパーの各店舗に商品が届くようになっている。
明日からはTVの『starlight』のCMにキララくんが登場する。
プロジェクトの終わりが近づいていた。
「珈琲どうぞ」
営業事務の後輩が、入力作業をしていた私の席に珈琲を置いてくれた。
さっきから席にいないと思ったのは、珈琲を淹れながら、友人と女子トークを広げるためだったのね。
……という声は出さず、あえて、ニッコリと笑っておく。
「ありがとう」
……悪阻がある身からすれば、この香りはありがたくも何もないのだが、それでも、感謝しておくのが、筋というものだろう。
「いえいえ。プロジェクトももう少しですね!頑張って下さい」
後輩はこれまた胡散臭い笑顔を向ける。
確か、この子は、井上主任の大ファン。
きっと心の中では、私のことを疎ましく思っているはず。
狸と狐の化かし合いだ。
「私、今日は中田先輩みたいに美味しく淹れられた気がするんです。よかったら、飲んで下さいよぉ」
後輩にそうせっつかれては、飲まない訳にはいかない。
「そうなの?じゃあ、ありがたく頂きます」