あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
10不器用なひと
「ああ……分かった。気をつけて帰ってきなさい。明日は半休取っていいから」
納品を済ませたと主任から会社に連絡があったのは、夜の11時だった。
これからこっちまで帰ってくるらしい。
「君はもう帰りなさい。中田さん。僕も帰るよ」
会社に残っているのは、矢田部長と私だけだ。
横浜には小松さんと春日くんが無事に納品を済ませた。
キララくんの限定ラベルがついたペットボトルは回収されて、群馬工場に戻されている。
『starlight』の方は、たった今、納品が完了した。
大阪支店の方も恐らく徹夜で商品を並べなくてはならないが、何とか一段落だ。
「『starlight』との会議は午後からだろう?君も半休取りなさい」
半休とは午前のみ、午後のみの有給休暇のことだ。
「いえ、私は半休なんて……」
「顔色悪いよ。まぁ、悪阻は一日休んだくらいで治るものじゃないけどね」
矢田部長が机上を片付けながら、あまりにサラリと言うから、思わず聞き逃しそうになったけど。
「え、悪阻って……!?え……」