あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
肯定も否定もできずに、私はうつむく。
主任が後悔しない結婚生活にしようと決めた。
だけど、仕事は辞めたくないって言った私の我儘で、結局、主任に心配掛けてしまっている。
荷物運びも、きっと、妊娠前なら主任も素直にやらせてくれた。
一人より二人のほうが、絶対に効率がいいことは主任も分かっている。
子供が要らないとかそういう意味じゃない。
だけど、一番大切なときに、何も頼りにできない人間になってしまった。
「……さっきの井上くんの拒絶が効いているのかな?」
部長の言葉は完全に図星で、渋々ながら、頷いた。
部長が苦笑する。
「井上くんは仕事は出来るけれど、プライベートは本当に不器用だからね」
矢田部長は主任のことをとても気に入っている。
まるで自分の息子のように、主任のことを話していた。
「でも僕も井上くんの拒絶はまともな判断だと思うよ。ただ言い方はキツかったけどね。きっと……お腹の子に何かがあったら、彼も後悔する」