あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


スーツの上着とワイシャツをホイッと投げ飛ばされる。

私はそれを慌てて受け止めて、部屋のハンガーに吊るした。

「……報告は受けたと思うけど、無事に納品は済んだ」

「はい。矢田部長から聞きました」

「恐らく、商品を積むトラックを間違えたことが原因みたいだ。あとは配送者の確認の怠り。次起こらないように対策をしないとな」

今度はスーツのズボンとベルトを渡される。
何気なく受け取ってから、驚いて主任を見てしまった。

「え!?しゅ、主任!!何脱いで……」

見れば、下着に、上は白いシャツ。
……引き締まった胸板が透けてみえるから、頬の温度が2℃ほど上昇した。

「……今更何照れてんだよ。ほら、早く寝るぞ」

私の反応に、主任もどこか照れくさそうに目の下を赤く染めて、ベッドの上の毛布に入った。

「寒いから早くお前も入れって」

……ズボンとベルトを持ったまま固まっている私にしびれを切らして、主任がこっちを見遣る。

「……寝るだけですよね……?」

「襲ってほしいわけ?」

「……今は寝たいです」

そう。寝たいんです。
寝不足なのです。

「だったら、大人しく毛布に入れ」

ほらって、毛布の片方を開けてくれる。
途端に見えてしまう、主任の下着。

「だったら、何故服脱ぐんですか!」

恥ずかしくて、顔を若干逸らした私。
今までは行為に夢中で何も思わなかったけれど、そういう雰囲気でもないのに、男性の下着姿は、恥ずかしい。

「お前、俺にスーツのまま、寝ろって言うのか?」

「え、いや……」

「仕方ないだろ。俺いつも寝るときはこの格好」

親の許しも得て、結婚もすると約束したのに、主任がどうやって眠るのか、朝はどうやって起きるのか、何も知らないことに気がついた。

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