あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
車が左を曲がり、建物の中に吸い込まれていった。どんどん薄暗くなる中、坂を下っていく。
ここは主任のマンションの地下の駐車場かもしれない。
迷うことなく、主任は角の駐車場に車を止めた。
だけど、下りる気配はない。
ハンドルの前で手を交差しながら、何か思案にふけっているようだった。
しばらくして、重い沈黙を破ったのは、主任だ。
「お前はそのことで、ずっと不安になっているのか?」
「……え」
私は不安そうに見えただろうか。
確かに、彼と一緒になりたいと思う一方で、子供が彼を縛り付けていないかと考えていた。
それが顔に表れていた?
うまく、隠していたつもりだったのに。
「結婚しようと言ってから、何か罪悪感を抱えたような、思いつめているような感じだった」
「……そんな」
「正直に言っておくよ。俺は責任で結婚などするつもりはない」