あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「……ごめん、なさい」

「仕方ない。お前が前の婚約者を忘れられないのは当然だ。そう分かっていたけれど、ちゃんと"好きだ"と言えなかった」

……無意識のうちに、私はあなたを傷つけていた。

そのことが胸を締め付けて、私は俯きがちな主任の頭をそっと胸に抱きしめた。

きっと謝ったら、彼は怒るだろう。
だから、せめて……。

「……ありがとう。苦しくても、ずっとそばにいてくれて、ありがとう」

そっと、彼の手が私の背中に回される。
狭い車の中で、私たちは互いを包み込むように、優しく抱きしめあった。

「お前のほうに、気持ちはない。分かっていたけれど、手放せなかった」

「でも、その未練のおかげで、私はあなたを好きになりました。元カレへの気持ちにピリオドが打てたのは、主任のおかげです」

涙の雫が顎から落ちて、彼の肩や髪を濡らしていく。


あなたは私を好きではないと悩んでいた。
あなたも同じように、私があなたを好きではないと苦しんでいた。

不器用で、弱虫で、どこか似たもの同士の私たち。

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