あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「俺はズルいんだ。綾音が妊娠したって聞いたとき、俺めっちゃくちゃ、嬉しかった。これで綾音と結婚する理由ができた、って」
「……主任」
私の胸の中で、情けないほど弱々しい声で本音を明かしてくれる主任に、仕事中の強気はない。
「セフレっていう関係になってしまって。好きだと切り出すきっかけなんて掴めなかった。綾音だって、求めていたのは、俺の身体だけだと思っていたし」
「ごめんなさい。私もおんなじことを思ってた。だから……好きだと気づいても、言い出せなかった」
涙が止まらない。
閉じ込めた想いの分だけ、それは溢れてくるようで。
「泣くなよ。俺の頭の上だけ、大雨警報が出そうだ」
冗談っぽく言って、顔を上げた主任が。
私の顔を見て、息を呑んだあと、下から唇を押し当ててきた。
瞳は開いたまま。想いを伝えるように、お互い、見つめあった。
そこに宿る熱情を、私はよく知っている。
熱い瞳を見るだけで、私の身体が疼き出す。
「……ヤバイ。こないだの宣言、守れそうにない」
耳たぶを甘く吸いつきながら、主任が囁く。
「宣言……?」
「妊婦さんは襲わない、って宣言」