あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
……雨の音がする。
まどろみの中で瞳を開けて、焦点が定まらないまま、右側を見た。
そこに主任の姿はないから、慌てて身体を起こす。
愛し合い、求めあったあとで、主任がまたどこかへ行ったのかと思ったのだ。
……だけど、違った。
主任は寝室の窓枠にもたれかかり、外を見ていた。
「……貴幸、さん」
散々鳴かされ、かすれた声で名前を呼んだ。
「起きたか。綾音」
彼は振り返り、私の元へやってくる。
すでに下着と白いTシャツを着ていた。
一方、私はまだ生まれたままの姿で、毛布にくるまれていた。
果てたあと、やはりいつものように、眠りについてしまったらしい。
「いなくなっちゃったのかと思いました」
「ごめん、不安にさせたな」
安心させるように、頭を撫でられる。
その手つきが優しい。
「身体は辛くないか?痛いところとかは?」
「ないです。大丈夫」
強がりでも何でもなく、どこも辛くなかった。
それだけ、彼は妊婦の私の身体に気を配り、優しく優しく、愛してくれた。