あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「何を見ていたのですか?」
「夜景。いつもな、お前の部屋から帰ったあと、ずっと眺めていたんだ。お前のマンションの方向」
彼がギシリと音を立てて、ベッドに腰掛けた。
広い背中が私に見える。
「朝起きて、寂しがってないかなとか。やっぱり隣で寝ていたかったかもな、とか」
「そんなこと思うなら、帰らないでくださいよ」
朝起きると残されていたメモ。
メモの数だけ、喜んで、メモの数だけ、哀しかった。
「これからは、ちゃんとそばにいるよ。お前がここにいる限り、俺は真っ直ぐここに帰ってくる」
彼は振り返り、まるで、誓いのキスのように、唇を重ねてきた。
「もう一回、言わせてほしい」
真摯な瞳。
長い指先が私の頬を撫でる。
急に改まった口調になった主任は身体ごと完全に私のほうを向いた。