あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「きっと、私のうわさ話でしょう。女子が食いつくネタ、撒き散らしてすみません」

苦笑した私に、矢田部長が首を振る。

「中田さんは悪くない。詳しい理由は聞いてないけれど、今回のことは君に非があったわけじゃないだろう?」

続いて井上主任もまるで私の心を見透かすように言った。

「だいぶ、えげつないこと言われてたけど俺らは女どもの噂とか信じてないから」

「ああ。そうだよ。中田さん」

主任の言葉に部長も頷く。

婚約破棄の理由は教えていないのに、無条件に私を信じてくれる部長と主任。
鼻の奥がツンとして、私は慌てて笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます」

思った以上に私の心は傷ついていたようだ。

「珈琲要りませんか?私、淹れてきます」

「ああ、戴こう。ブラック頼むよ」

「俺もブラックで」

二人の注文を聞き、私は逃げるように、給湯室に向かった。
ホッとしたら、雫が頬を転がった。

これを淹れたら、残りを終わらそう。
私を信じてくれた二人に精いっぱいの感謝を込めて、今は仕事をしよう。

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