あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
3
「おかえりなさい。貴幸さん」
家に帰ったのは、夜7時。
素敵な笑顔で迎えてくれたのは、妻、綾音だ。
「ただいま」
結婚するにあたって、綾音からあるルールを決められた。
それはどんなことがあっても、挨拶はきっちりすること。
喧嘩しても、忙しくても、疲れていても、挨拶は忘れないで、言われたらちゃんと返して。
そんなことを約束させられた。
挨拶なんて当たり前だろうって思ったが、ほんの少し前まで"おやすみ"も"おはよう"も言ってこなかった自分に気がついて。
そんな些細なことが綾音を傷つけていたのだと思うと、たまらなく切なくなった。
あれからはちゃんと挨拶は忘れないようにしている。