あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


午後一時。
訪問してきた平野さんと打ち合わせ。

主に、キララくんパッケージの売れ行きの報告だ。

「ご無沙汰しております。井上さん」

「お久しぶりです、平野さん」

最後に会ったのは、ヘッドハンティングの話を断った日。
だけど、そんな気まずさも感じさせない晴れ晴れとした笑顔で、平野さんはお辞儀をしてきた。

「どうぞ、お掛けください」

「ありがとうございます」

「早速ですが……」

平野さんは仕事中は本当にキリッとしたキャリアウーマンだ。
オンオフの切り替えが早い。

世間話もすっ飛ばして、本題に入ってくれる所もいい。

酔うと質問攻めにされるが、まぁ、仕事中に支障を来されることはないから、その点は吉岡さんよりも断然マシだ。

素敵な女性だとは思う。
しかし、惹かれないのは、きっと、綾音というひとに出会ってしまったから。

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