あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
5
「……すまんな。井上」
休憩室で、カフェオレを片手にしょげているのは、松山さんだ。
「重たい空気だったよな」
「悪いと思うなら、状況を説明してください」
あの重たい空気を打ち破ったのは、平野さんだ。
彼女は俺を見て、お疲れ様でしたと声を掛けたあと、足早に去っていった。
松山さんは茫然自失で立ちすくんでいたから、俺はその腕を引っ張り、休憩室に連れてきた。
そこでようやく我に返った松山さんが、呟いた言葉が冒頭のそれだ。
松山さんはまだ困惑したままで、髪の毛をグシャっと掻き乱した。
「……陽子は……あいつは、かつての恋人だ」