あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「タクシー来てるぞ。お前も乗れ、中田」
それでも時間は過ぎて、お開きになる時間は来てしまうわけで。
井上主任はぐでんぐでんになった部長を肩に担ぎあげる。
部長と主任、呑んでいる量は確か同じなのに、主任の顔色は変わっていない。
部長はもうほとんど眠っている。
「まだ終電ありますし、歩いて帰れますよ。私、アルコール入ってませんし」
私の言葉に、一瞬だけ主任が眉をひそめた。
このひと、ほとんど顔の筋肉動かないんだよなぁ。
表情の変化が読めるのは、ひそめられる不機嫌な眉だけ。
「女ひとりで帰らせる訳にはいかない。上司命令だ、乗れ」
いつもこの時間まで残業してるから平気なのに。
でも、そっか。
これで私に何かあったら、後味悪いもんね。
主任は責任感強いから。
「わかりました。乗らせていただきます」
主任に促されて、タクシーの中で自分の住所を告げると、三人とも同じ方面だとわかった。
最初に部長を家に帰したあと、私の家まで送ると主任は言ってくれた。