あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「タクシー来てるぞ。お前も乗れ、中田」

それでも時間は過ぎて、お開きになる時間は来てしまうわけで。

井上主任はぐでんぐでんになった部長を肩に担ぎあげる。
部長と主任、呑んでいる量は確か同じなのに、主任の顔色は変わっていない。

部長はもうほとんど眠っている。

「まだ終電ありますし、歩いて帰れますよ。私、アルコール入ってませんし」

私の言葉に、一瞬だけ主任が眉をひそめた。

このひと、ほとんど顔の筋肉動かないんだよなぁ。
表情の変化が読めるのは、ひそめられる不機嫌な眉だけ。

「女ひとりで帰らせる訳にはいかない。上司命令だ、乗れ」

いつもこの時間まで残業してるから平気なのに。

でも、そっか。
これで私に何かあったら、後味悪いもんね。

主任は責任感強いから。

「わかりました。乗らせていただきます」

主任に促されて、タクシーの中で自分の住所を告げると、三人とも同じ方面だとわかった。

最初に部長を家に帰したあと、私の家まで送ると主任は言ってくれた。

< 18 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop