あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
一番よく喋る部長が夢の中で、私は帰ることが憂鬱でだんまり。
無口な主任はもちろん何も言わないから、聞こえてくるのはタクシーのエンジン音と部長の寝息。
ずっと、窓の外を見つめていた。
明日の朝も、きっと、ひとりだ。
仕事は片付けてしまったし、何をしよう?
いい加減、部屋を片付けなくちゃ、いけないかな……。
途中で部長を下ろした。
部長の寝息が聞こえなくなると、ますますタクシーは静かだ。
運転手も空気をよんでか、無言のままだった。
本当なら、明日、勇輝の部屋の片付け、一緒にするはずだった。
来週には勇輝が来て、一緒に婚姻届を提出して……一緒に暮らし始める約束だった。
だけど、もう、彼はあの部屋に来ない。
私達の未来が沢山詰まったあの部屋は……もう私が寝るためだけの寂寞の空間になってしまった。
みのりには強がってみせたけれど、私、やっぱりさみしい。