あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


ややあって、社長の声がする。

「娘から、井上くんと補佐の井上さんは夫婦だと聞いた。夫婦で同じ部署にいるのは許されていないから、私は異動命令を出したのだが?」

……やはり、社長令嬢の吉岡さんが関わっていたのは、確かなようだ。

俺は説明をして、社長を説得させるために、頭を上げた。

心の中で、戦闘開始のコングが鳴り響く。

「確かに私と妻は社内結婚を致しました。もちろん、私か妻が異動となるのは承知の上です。

しかしながら、妻は今、妊娠4ヶ月であと2ヶ月で休職する予定でいました」

そう告げると、社長はその瞳を大きく開く。
驚いているようだ。

きっと、俺と綾音が夫婦という話は聞いていたが、綾音が妊婦だとは知らなかったようだ。

それもそうだろう。
うちの社員は決して少なくない。

社員全員のことを把握することは不可能に近いだろうから。

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