あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「綾音、もう寝た?」

夜、おやすみと言い合って、布団に潜り込んだ俺たち。

俺に背中を向ける綾音に声を掛ける。

「起きてますよ」

綾音はゴソゴソと寝返りをうち、俺と向き合う。

「吉岡社長と直談判して、お疲れでは?」

「いや、大丈夫だよ」

俺の身体を気遣ってくれる綾音を安心させるように、そっと頭を撫でた。

「貴幸さん、ありがとうね。私、あと2ヶ月、営業部のお仕事、頑張る」

異動の話は無くなったと矢田部長から聞くと、綾音はそれは嬉しそうに微笑んだ。

矢田部長と俺がいない間、営業部を仕切っていた松山さんがこっそり、教えてくれたが、綾音は珍しく、仕事に集中できず、頻繁に時計を見ていたそうだ。

直談判の結果を今か今かと待っていたのだろう。


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