あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「もしかして、松山さんに聞いたの?私が松山さんに告白した話」
……図星だから答えずにいたら、綾音が安心させるように微笑んだ。
「惚れ直しませんよ。あれは幼い私の恋にもならない憧れのようなものですから」
「憧れ、か」
ふと安堵のような吐息をすると、手のガードが緩んだのか、綾音の手は俺の手から逃げ出す。
「恋してみたかったんですよ、思春期真っ只中の私は」
そっと綾音の手のひらが俺の頬を撫でたと思うと、いっきに距離を縮めて、触れるだけのキスをしてきた。
目を閉じる隙もなく、斜め上から降ってきた唇。
いつも、俺からキスするときとは違う、上下反対の位置に、俺は息を呑む。