あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「ごめん、この資料あとで確認する。俺、ちょっと出るわ」
鈴木から貰った資料をデスクに置いて、俺は部屋を飛び出た。
廊下で、綾音の携帯に電話を掛ける。
コールを何回聞いただろう。
出てくれ、と願うたびに、その機械音は俺に冷たい水を浴びせかけるようだ。
不安でたまらない。
心が冷たい。
電話は出ない。
プライベートの携帯をあいつは仕事中マナーモードにしていることに、気がつく。
ため息をついて、電話を切った。
今度は足を動かす。
休憩室を見たけれど誰もいない。
「どこ……行ったんだよ、綾音」
そのとき電話が鳴り響く。
慌てて携帯を見ると、松山さんからの着信だった。