あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
医師に緊急で診てもらい、くだされた診断は、切迫流産。
"流産"というワードに俺の眉間に皺が寄ったが、医師は冷静に教えてくれた。
"切迫流産"は流産しかかっている状態のことで、しばらく安静にすれば大丈夫だと。
1週間は入院だと告げられた。
1週間も仕事に穴を開けること、綾音はきっと気にするんだろうな。
『ごめんなさい』って、きっと、何度も謝る姿が目に浮かぶ。
「……あ、そうだ。矢田部長に報告……」
俺は病室を出て、通話可能なゲストルームに向かった。
矢田部長の携帯電話に電話を掛けると、ものの数回で電話に出た。
『もしもし!?中田さんは……!?』
ずっと連絡を待っていたのだろう。
気が動転して、すぐに報告しなかったことがすごく申し訳なかった。
「ご報告が遅くなって申し訳ありません。切迫流産でした。安静のために1週間は入院だそうです」
矢田部長はひとまず赤ちゃんの命が留まってくれたことに、安堵したのか、電話の向こうで吐息した。
『そうか……。仕事はどうにかするから、ゆっくり休ませてあげなさい』
「はい。ありがとうございます」
『安静にすることが部長命令だと強く言っておいて』
さすが、部長。
綾音が仕事を休むことを気にするだろうことは、お見通しだ。
彼女の気が少しでも、休まるように言ってくれたのだろう。