あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
ひとまず、病室に戻ると、やはり少し疲れたような顔で眠る綾音がいた。
点滴を打っていない右の手のひらはお腹に添えられていた。
無意識なはずなのに、まるで、我が子を抱きしめているように見える。
「……綾音」
意識を失って、そろそろ2時間。
なかなか目を覚まさない妻の頬を撫でる。
俺のことを一番理解し、信じてくれる妻。
ヘタレだって、言われたっていい。
それでも信じて、隣に寄り添っていてくれるなら……。
それだけでいい。
早く目を覚ませ、綾音。
「……好きなんだよ。大好きなんだ」
まるで、願掛けのように、その唇にキスを落とした。