あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「この度は娘が綾音さんとお子さんをこんな危険な目にあわせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

更に驚いたことに、渋々ではあるが、吉岡さんも社長の後ろで頭を下げた。

「綾音さんの身体を考えもせず、本当に申し訳ありませんでした」

誇り高き吉岡さんのこと。
社員に頭を下げることに、プライドがへし折らているのだろう、声が固い。
それでも、彼女から謝られるなど、夢にも思わなかった。

「そんな……頭を上げてください!」

焦る綾音。

「子供も今のところは持ちこらえてくれていますから、お気になさらず。子供のことを配慮しなかった私にも非はありますから」

綾音は苦笑のような笑顔を浮かべた。
社長は顔を上げて、頭を横に振る。

「娘が1時間以上も綾音さんを立ちっぱなしにさせたと聞き、本人もそれを認めています。悪いのは、うちの娘です」

社長は再び頭を下げた。
吉岡さんは頭を上げたが、俯いている。


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