あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「これがただの八つ当たりだって分かってる。だから、井上さんに叩かれて、初めて自分を止めることができて、ホッとしているところもあるのよ」
吉岡さんは社長から手を離し、勢いよく頭を下げた。
「井上さん、綾音さん。私の身勝手な行動でご迷惑をお掛けしました。本当に、本当に申し訳ありませんでした!」
先ほどまでの嫌々だった吉岡さんはどこに行ったのだろう。
清々しい声が室内いっぱいに響く。
「こんな馬鹿な真似、もうやめます。私が変わらなくちゃ、きっと何も現状は変わらないから」
吉岡さんは、一つ呼吸をしてから、今度は社長と向き合った。
社長は、娘の行動について行けず、開いた口が塞がっていない。
「お父さん。もう一度お願いします。井上さんを責めないでください。私が悪いんです」
社長は自分の非を認めた娘がそれほど意外だったのだろうか。
言葉少なく、
「分かった……よ、美麗」
そう放心状態で呟いただけだった。