あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「真幸ちゃん、可愛いわね〜」

綾音から真幸を受け取り、抱き上げるのは、平野さんだ。
仕事中じゃ、絶対に見せない崩れた笑顔を見せている。

抱いてみますか?と尋ねた綾音の言葉にコクコクと大きく頷いたのは、平野さんだけだった。

怖くて、抱けないというのが、男性3人の主張だ。

「平野さん、抱っこ上手ですね」

「これでも、従兄弟の世話とかよくしてましたから」

真幸は、平野さんの腕の中で変わらず、小さな寝息を立てている。
実の父が抱いたら、泣くくせに。

「陽子、いい母になりそうだなぁ」

最愛の恋人に見惚れているのは、松山さんだ。

締まりの無い顔。
部長補佐の威厳は何処へ行った?

「そんなこと仰るなら、松山さんもご結婚しましょうよ。平野さん、毎日会えますよ?」

春日の言葉に何故かボッと赤くなる松山さん。

「何、照れてるんですか?松山さん」

「べ、別に照れてなんか……ただ主婦やってる陽子も可愛いんだろなぁって……」

片手で口元を隠しながら、松山さんはサラッと甘い言葉を呟く。
紳士的な雰囲気がする彼が、こんな溺愛キャラとは意外だ。

「あ、平野さんも真っ赤だ」

綾音の声に振り返ると、平野さんも松山さんに負けず劣らず赤い頬をしている。
いつもかっこいい印象だったけれど、この人こんな表情もするんだ。



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