あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


主任もまた、同じように、珈琲を飲んでいた。整った顔立ちの彼は珈琲を飲むだけで、様になる。

大人の男性って、感じ。

……なのに、その珈琲のマグカップが三毛猫なのが、不釣り合い。

仕方なかったのだ。さすがに勇輝が使っていたマグを出すわけにもいかないし、来客用のカップはどこのダンボールかわからない。

仕方なく、ほんとに仕方なく、私は昔使っていた三毛猫柄のマグカップを出してきたのだ。

けど、やっぱり……似合わない。

「何笑ってんだか」

笑い声は押し殺したはずなのに、主任にバレていた。
視線を感じる。

「主任に猫さんは似合いませんね」

「お前が出してきたんじゃねぇか」

「まぁそうですけど……」

空元気でも、無理やりでもない、笑いがこみ上げてくる。

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