あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「結婚っていいものだよ。家に帰れば、大好きな人が待っているって」

自他共に認める愛妻家である矢田部長がそういうと春日が口を尖らせた。

「やだな〜僕も大好きな人が欲しくなっちゃうじゃないですか」

「あれ、春日くん、モテるのに彼女いないんだ?」

綾音の言葉に春日が寂しそうに頷く。

俺が結婚し、松山さんに溺愛する彼女ができた今、営業部の女子の目を引いているのは、この春日だ。

その春日が口を尖らせて、俯いた。

「こないだフラれたんですよ」

「あらま」

そうなのだ。つい先週だったかな。
休憩室でやたらと負のオーラを放つ春日がいて、驚いて、訳を尋ねたらそんなことを言っていた。

「相手は4月から入ってきた新人の子でさ。大学時代からの恋人がいるから、ごめんなさいだってさ」

「松山さん。他人事だと思って、笑わないでください」

笑いを堪えるために首をすくめる松山さんを春日が睨みつける。

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