あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「ねぇ、主任。ほとんど誰にも話してないけど、今回のこと、話してみてもいいですか?」

みのりにしか伝えていないこと。

……この人ならいいと思ってしまった。

きっと、欲しい言葉はくれなくても、ただ黙って聞いていてくれそうだ。
そして明日には何を聞いても忘れたかのように過ごしてくれるかもしれない。

「お前の好きにすればいい」

拒否はされていなさそうだから、私は語り始めた。

彼と出逢ってから、今日までのこと。

出逢いは通勤電車の中だった。

「目の前のお婆さんに、二人同時に席を譲っちゃって、そのお婆さんに笑われたのが始まりだったんです」

それがきっかけで、同じ電車に乗ると、挨拶を交わすようになって、そのうち、連絡先を交換して。

「告白は向こうからでした。優しくて、親切な人で、好きかもって思い始めていたときだったから、交際に踏み切りました」

主任はただ黙っているけれど、耳は傾けていてくれているようだ。
だから私は話を続けた。

優しい彼は、私の意見を尊重してくれた。時々、優柔不断だと思うところがあったけれど、彼と同じ時間を過ごすほど、彼が好きになっていった。

「交際3年目でプロポーズされました。3ヶ月前のことです。お互いの親にも紹介して、結婚の許しも得ました。結婚指輪も買ったし、一緒に暮らすこの部屋も借りた」

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