あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


私は詰まれたダンボール箱を見つめる。
一緒に荷解きするはずだった。

私たちの生活を一緒に作り上げるはずだった。

「でも私だけ先にここに引っ越してきて……前のアパートを解約した日に、婚約破棄を言われて……」

あの日……ここで頭を下げた勇輝。
強がって笑顔を見せた私。

他に何が出来ただろう?
高校時代からもう10年間も片想いを続けてきた彼に、初めてできたチャンスなのだ。

笑ってサヨナラと言う事が、私の精いっぱいの強がりとプライドとエールだった。

「好きな人がいるらしいです。もう10年間も片想いを続けてきていて……やっと彼の想いを伝える日が来たらしいんです」

「で。黙って引き下がったんだ」

「黙ってなんかないです。今までありがとう、サヨナラって」

「物分り良すぎだ」

「10年間の片想いに太刀打ちできるわけないじゃないですか」

……私は上司相手に何を愚痴っているのだろう?

こんなこと聞きたくもないですよね。

ミルクコーヒーを一口飲んで、あのときのことを脳裏の片隅に追いやりながら、私は笑顔を作った。

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