あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
私の素直な言葉は、主任の眉を緩ませた。
笑うわけじゃないけれど、眉間の皺が消えた。
その途端、手のひらからマグカップが奪われて、テーブルに置かれた。テーブルの上には2つのマグカップと、プラチナリングが並んでいる。
「え?キャッ!」
体が急に不安定になったのは、抱き上げられたから。
「寝室はどこだ?」
「へ?あの!?」
何故か私は……主任の腕の中。
狼狽える私を無視して、主任は寝室を探し始める。
「な、なんでですか?」
お姫様抱っこみたいに、抱き上げられて、寝室を探している。
こんなこと、普通の上司と部下がすることじゃない。
困惑する私の耳に顔を近づけて、主任は囁いた。
「寂しいなら、そばにいてやる」
もともと2LDKの部屋だ。寝室を探すのは、そんなに難しいことではなかった。
寝室を見つけた主任は、まだ一度も使われていないベッドの上に私を横たえた。