あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
ベッドの上は私ひとりだった。
主任はもう帰ったのだろうか?
ベッドの下に落ちている服は全て私のものだ。私は急いでそれらを身につけて、寝室を出た。
リビングは、静寂に包まれている。
ここから物音がしないのはいつものこと。
詰まれたダンボール箱とソファと毛布。昨晩の記憶のままだ。
私はベランダ際に立って、ガラス窓から外を眺めた。
リビングに主任の姿はなかった。本当に昨日のことは一夜限りのものだったのかもしれない、と落胆している自分に驚いた。
昨日の主任は優しく、激しかった。
身悶えて、懇願して、喘いで。
たった一度の行為に意識を飛ばされるなんて、思わなかった。
主任の不機嫌以外の眉の潜め方も知ってしまったし……。
主任からしたら、ただの欲望のはけ口だったのかもしれない。たまたま部下が寂しそうにしていたから、それを言い訳にしたのかも。
昨晩のことは気まぐれだから……忘れろと言われるかもしれない。
「……そんなの無理だ」