あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「中田さぁん。私がお願いした書類はどこですか!?」
「書類?なんのこと?」
分かっているけれど、知らないフリをしてみせる。
「私が金曜日にお願いした矢田部長に出すやつです!」
「ああ、あれ。矢田部長に確認してもらったの。オッケー貰えたから今部長の手元にあると思う」
「えー!?」
その悲鳴が可愛らしく聞こえるのは、その話は秘密の話であり、周り(特に部長や主任)に聞こえてはいけないから、声をセーブしているためである。
「なんでですか?それじゃあ、私が仕事押し付けたの、部長にバレるじゃないですか!」
だって、大人しく押し付けられてるのも癪だから、青ざめてほしかったんだもん。
と、素直にいったら、余計めんどくさそうだと思っていたら、誰かがポンと私の肩を叩いた。
「中田お前、仕事をお願いされたんじゃなくて、押し付けられてたのか?」
井上主任だった。
不機嫌さは相変わらず眉が語っている。
そんな主任を見て、固まったのは鈴木さんだ。
「え、いや……その……」
弁解しようにも、言葉が出ないご様子の鈴木さん。
そりゃ、『押し付けた』とさっき、ご本人がすでに言っちゃってるから、弁解のしようがない。
「今朝になって取り繕ったところで、土曜日に中田が出勤してた時点で、俺にも部長にもバレてるからな」
ますます、青ざめた鈴木さんは、私を睨みつける。
『なんで土曜日出勤なんてしたんですか!?』と目が訴えている。
それに気づいた主任が私のほうを向いた。
「中田、次他のやつに仕事頼まれても、休日出勤までして終わらせなくていいから。途中で終えて、デスク置いとけ。これ、上司命令だから」
「わかりました。井上主任」