あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「じゃ、頼む」

「了解です!ブラックでいいですか?」

「ああ、うん。ブラックがいい」

珈琲の粉をカップにいれていると、主任が口を開く。

「で。さっきのため息って何なんだ?」

「……」

「また女どもに何か言われたか」

ゆっくりと振り返ると、主任が真剣な顔で私を見ていた。その眉が潜められて、瞳が細められている。

……主任、心配してる……?

不機嫌とは眉が若干違う。その違いに気づけた自分に驚いた。

「また仕事押し付けられたのか?」

「あ、いえ、違うんです!私が男ならここまで噂の的にならなかったかなって」

「お前が男なら……」

「婚約者のひと、実は意外とモテる人で、今頃、周りの女性から婚約破棄を喜ばれてたりするんじゃないかって……不公平だな、って思っただけです」

仕方ないことだ。
女の敵は女だから。

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