あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
05幸せになってください
彼は……井上主任は土曜日になるたびに私の家に来るようになった。
いつもスーツ姿で、仕事帰りのようだった。
そのまま、私の家で食事を取り、珈琲を飲んで、そのままベッドへ。
果てたあとは、気を失うかのように、眠りについて、朝起きたら、テーブルに彼からの置き手紙がある。
彼は決して、泊まっていかない。
私の隣で眠りにつくこともない。
二度目の夜に、私は主任に恋人がいないことを聞いていた。
『ねぇどうして、私を抱くんですか?』
何度目かの夜にそんなことを聞いたことがある。
彼は私についばむようなキスをしながら、素っ気なく答えた。
『抱きたいから』