あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
月曜日。
寿退社をしなくてよかったと思いながら、出社した。
婚約破棄の上、無職だなんて、お笑いものになるところだった。
夜にまた少しだけ泣いて、ちょっと目が腫れちゃったけれど、メイクで何とか誤魔化せたと思う。
最寄り駅の階段を駆け上がって、照りつける太陽を見つめながら、よし!と気合いをいれた。
まだまだ悲しいけれど、でも、とりあえずは、目の前の仕事をがむしゃらに頑張ろう!
「そんなとこで立ち止まられちゃ、邪魔」
クールな声がして、背中を押される。
振り返ると、同期で一番仲が良い東郷みのり(とうごうみのり)が立っていた。
170センチの彼女は微笑みながら、私を見ている。
「みのり。おはよ!」
できる限りの笑顔を作ったのに、彼女は眉間にシワを寄せた。
「あんた、メイク濃いよ。何かあったの?」
その日のメイク具合で私の様子がわかるとは……彼女の観察力には恐れ入ります。
「……あーうん。ちょっとね。色々混み合ったことがありまして」
みのりには誤魔化せないと思っていたから私はショルダーバッグを肩にかけ直しながら、誘う。
「今日のランチ、一緒にどう?そのときに話すよ」
私の様子から何かを察したのだろう。
外された左手薬指の指輪にも気づいたのかもしれない。
彼女は二つ返事をしてくれた。