あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「主任。ありがとうございますね」

「なんだ、いきなり」

「寂しいときに、主任がいてくれたから、なんとか立ち直れたんです」

主任は無言でコーヒーを啜る。
いつもの無表情は、彼の感情を表さない。

時計の針がカチッと音を立てて、11時を知らせる。

「俺はもう用済みか?」

淡々とした口調からは寂しさなんて微塵も感じられない。
そのことが悲しくて。

用済みだと言われて、少しショックを受けてほしいと思ってしまった。

でも主任はいつもどおりのクールさで、だから私がもう要らないと言ったら、「わかった。今までありがとう」って言って、去っていきそうで。

「用済みなんかじゃないです」

みっともなく、袖を引っ張って、縋ってしまった。
勇輝に別れを告げられても、何も言わなかった私なのに。

「主任が抱きたいときに、いつでも抱いてください」

自分から宣言したセフレの関係。

恋人でなくてもいいから、短い逢瀬の間くらいは、あなたの一番でありたい。

手のひらからマグが奪われる。
主任の分と2つ、テーブルに置かれた。

いきなり、激しいくちづけが私を襲う。

「じゃあ覚悟して。2週間できなかったんだから。優しくなんかできない」

キスの合間に囁かれた言葉。
私は微笑みながら、囁き返す。

「望むところです」

カラダだけの関係だと心に決めて。
溢れる愛しさに蓋をして。

今日も私はあなたの背中に 腕をまわす。

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