あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


主任のことを、私は何も知らない。

本当に彼に恋人はいないのか。
会社では独身だと言われているが、それも定かじゃない。

抱くだけ抱いたら、帰っていく主任。

もしかしたら、家には別の誰かがいて。
朝までには帰らなくちゃいけないのかなって。

勘ぐってしまう。

もしそうだとしたら、この関係は不倫だ。
私の存在が……誰かを苦しめているかもしれない。

「……おい。中田?大丈夫か?」

右肩を揺すられた。
私の心を乱すその手のひらが肩に乗っていた。

「お前、酒呑んでないよな?顔真っ青だぞ」

心配そうに顔を覗き込む主任。
私は曖昧に笑い返した。

「烏龍茶しか飲んでませんよ。大丈夫です」

大丈夫じゃないのは、心のほう。

私は何にも主任のことを知らない。
そのことに、どこか打ちのめされている私がいた。

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