あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


酔いつぶれた橋本さんを、平野さんが送っていくことになった。
主任が私を送っていくと言ったから、羨ましさと嫉妬が混じった瞳を平野さんから向けられた。

外には二台のタクシーが停まっている。
その一台に橋本さんを押し込み、平野さんは振り返った。

「本日はありがとうございました」

さすがは営業部。主任に視線を送る平野さんはもうそこには、満面の笑みがあった。

平野さんを見送ると、私と主任もタクシーに乗りこんだ。
あいもかわらず、無表情の主任は何を考えているのか、分からない。

ヘッドハンティングの話を、主任はもう知っているのだろうか。

主任が私の家の住所を告げると、ゆるゆるとタクシーは進み始めた。

「お前本当に顔色悪いぞ」

この暗闇の中でも、気づかれてしまった。
お酒を呑んだわけじゃないのに、身体が辛い。

「……少し、寝ていてもいいですか」

「わかった。家についたら、教えるから、少し休め」

主任を見ると、色んなことを考えてしまうから。
私は思考をシャットダウンするために、瞼を閉じた。

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