あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


とりあえず、座席に座って、メールを一番に読む。つもりだったが。

オフィスには、主任のタイピングの音が響いていた。

思わず主任に視線が移る。

仕事が出来て、結構意外と部下思い。
仕事に対しては情熱家。
しかし部下の変化はすぐに気づいて、不意打ちで優しかったり。

おまけに容姿もなかなか整っている。

……平野さんが彼を公私共に求めるのは、当然かもしれない。

主任は、ヘッドハンティングの話をもう知っているのだろうか。
受けるつもりなのだろうか。

大丈夫だと笑って見せたけれど、本当は大丈夫なんかじゃない。
昨日も今朝もこのことばかり考えていた。

もしこの話が事実で、主任がそれを受けたら……このオフィスから主任が消える。

そしたらきっと、会えなくなるんだ。
だって私は主任の連絡先を知らない。

プライベートの連絡先を教えてもらっていない。
主任が私の部屋を訪れるのを待つ以外、逢える方法はほとんどない。

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